エミリー・ヒラリーのルポ | Dutchwest Japan / ダッチウエストジャパン

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エミリー・ヒラリー・るりこのルポ


Reportage


るりこさんのイタリア便り

わたなべ るりこ
るりこ
ZARINAイタリア駐在スタッフ
イタリア各地を訪れたり、ZARINAで淹れた
エスプレッソで作るお菓子のレシピをご紹介します。
  1. HOKUSAI

    2017年9月29日るりこさんのItaly便り

    あそこの鶏がいるお宅のコスモス、あの角の整然と整地された、

    見るにも誠に美しい畑があるお宅の小菊も今が満開です。

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    地球温暖化とは言え、自然ってやっぱり凄い底力を持っているんだと

    つくづく思ったのはちょうど、23日の秋分の日でした。

    イタリアは日本のように祝日ではありませんが、

    その日外を歩いていると「秋の匂い」がしてきました。

    わらを焼いたような匂いや、風そしてそこに金木犀の香りがかすかに混ざった “秋の匂い”です。

    暑くもなく寒くもなくちょうどいい気温で、

    いろんな匂いが優しい風に吹かれてスゥ~っと抜けて行きました。

    今年は夏が異常に暑かったせいか、もうすでに栗が店頭に並んでいます。

    各自治体毎に、野外で映画観賞会が開かれるため、

    イタリアの夏の映画館は割と空いているのですが、

    秋になって涼しくなってくると、またお客さんが増えてくるようです。

    そんな中、2週続けて映画館へ行くきっかけがありました。

    それはいずれも、日本に関するもの。

    先週は、劇場用長編アニメ「この世界の片隅に」。

    皆さんはご覧になりましたか?

    もう涙が溢れ出てきて止まらなくて、、、。

    5年前に行った広島の町並みや、この映画の舞台となった呉と少し似ている

    尾道の丘からの海の眺めを思いだしました。

    昔は「漫画なんか見ちゃだめよ。漫画はよくないから。」等と親に叱られたものですが、

    何をおっしゃいます、今では、世界に誇る日本のれっきとした文化ではありませんか。

    結構入っていましたよ、お客さん!

    こちらの友人達は皆口々に、「うちらは日本のアニメで育ったようなものよ!」と言います。

    実に以外でしょう?!

    konosekai.jp/

    そしてもう一本のタイトルは「HOKUSAI DAL BRITISH MUSEUM」。

    www.youtube.com/watch?v=IV696EMhMQI

    こちらは、イタリアでは珍しく吹き替え無しで、字幕がイタリア語でした。

    ドキュメンタリー映画と言っていいでしょうか。

    この夏、ロンドンにある ‘BIRITISH MUSEUM’で」開かれた “北斎展”の様子や

    それに係わった人達のインタビュー、そして北斎に絶大な影響を受けたゴッホの話など、

    とても興味深いものでした。

    私はどちらかと言うと美術館巡りをするタイプではありませんが、

    心のアンテナにピピーンと来たものについては見に出かけます。

    特に、あの ‘大波’で有名な「神奈川沖浪裏」は外国の人に非常に人気があるそうです。

    「今も昔も変わらない、人間の暮らしが彼の絵の中に見ることが出来る。

    一般庶民を主人公にして称えた、それが北斎の魅力だと思う」とは、

    この大展示会の責任者クラーク氏。

    イタリア国民が愛するエスプレッソコーヒーを沸かすこの直火式のモカを、

    果たして北斎は手にしたか、味わったかどうか、、、。

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    鎖国の時代に日本へコーヒーが伝わったと言うことは、

    北斎は残念ながらそれを口にしたことは無かったか?!

    でもきっと好物だった大福餅とコーヒーの相性は悪くないはず、、、などと

    勝手気ままに空想をめぐらす秋の夜長です。

    その翌日、偶然にも本屋さんでこの二冊の本を見つけました。

    1993.jpg 1994.jpg

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           No.198 リゾとソッリーゾ

    バス停前にウインカーを点滅して停止した車、

    そこから降りた高校生らしき一人の少年は、どうやらバス時刻を確認している様子です。

    各学校が新年度を迎えるこの時期によく見る光景です。

    学校関係の新年度に合わせて、バス時刻も “冬時間”と命名されて変更されます。

    9月初旬は日中もカーっと暑くなってまだ海水浴にも行くことが出来たのですが、

    10日あたりからぐっと気温も下がって朝晩涼しく、、、

    いや寒くなってきて外出する時は何を着ていくべきか、随分迷ってしまいます。

    各種講座の募集のお知らせも、色々目にとまります。

    各種ダンスやヨガスクールのそれに混ざって、空手やカンフーなんかもあるんです。

    9月の我が家のカレンダーは「書き込み」が多くなります。

    各地で開かれる収獲祭の日程の確認のためでもあります。

    同じ時期にあちこちで様々なイベントが開かれるので、

    うっかりするともう終わっていた、ということがよくあるのです。

    実は一つ行きたかったりんご祭も既に終了していました;;;

    サンティーナ叔母さん夫婦が毎年行く、

    グルーモロデッレアッバデッセ / Grumolo delle Abadesse のリゾット祭、

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    私達も行ってみることにしました。

    グルーモロデッレアッバデッセはヴィチェンツァ県にある人口3700人の村、

    ヴェネツィアのマルコポーロ空港から西へ約70キロ、

    ここで美味しい米が栽培されています。

    1982.JPG

    リゾットデアバデッサはその昔、秋の収獲を祝うために用意されたご馳走です。

    現在の近代的な農業機械と違って、その昔は手作業で、

    しかも収獲された米を運ぶのは馬車でしたから、

    その収獲が全て終わった時の喜びはひとしおことだったでしょう。

    農家の人達が振る舞っていたリゾットがこのお祭りに進化したのです。

    実はこのレシピを知っているのはごくわずかなコックさんのみ。

    4年前、テレビで活躍する人気有名シェフがこのイベントに訪れてこっそり探ろうとしたけれども、

    地元コックさん達の「厚い壁」にはばまれて、あばかれなかった、というエピソードも。

    グルーモロ デッレ アッバデッセは、ヴィチェンツァとパードヴァ間にある小さな町/村、

    ここで既に1500年代から修道士によって米が栽培されていました。

    テズィナ川から流れる (その昔は物資の流通経路であって、馬車がその脇の堤防を貨車を引いていた) 澄んだ水、

    地理的に流通にポジティヴであったこと、そしてまたヴェネツィア貴族が貿易の危機を迎えた時に、

    出入荷物資の需給に密接な関係であった地域であることに改めて「気がつき」

    そこを開拓して行った、それらが全て合わさって、今日のここの米に発展したという歴史があります。

    現在では、1600年代の半分以下の120ヘクタールになってしまいましたが、

    この歴史ある品種はまだ現役なわけです。

    ヴィアローネナーノという品種がここの米で、米粒は小さめ、

    調理の過程で水分をよく吸うのが特徴のために、

    美味しいブロードを吸わせるのを必須とするリゾット作りには、最適なお米だと言う訳です。

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    SLOWFOOD協会のプレシデにも認定された、イタリアの6種類の歴史ある品種の一つ。

    昨今は地球温暖化の影響を受けて、農業を営む人の苦労は絶えません。

    だからこそ、農家の人達に感謝を忘れずに、米や食べ物を粗末にせず、

    美味しく頂きたいと改めて思います。

    見なれたとうもろこし畑と通り過ぎて、

    たまに田んぼを見つけると「ハッ!」と胸がときめくのは、

    やっぱり正真正銘の日本人であるんだなあとつくづく思います。

    米はイタリア語では「リゾ」と言います。

    因みに笑顔は「ソッリーゾ」、言葉遊びみたいでしょ?

    米を食べて笑顔で健康、というキャッチコピーいかがでしょうか。

    ちょっと時代遅れ?

    1984.JPG

    ZARINA


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