「長い岩」の名の通り、縦に長いサッソルンゴは標高3181メートル。
その山をまっすぐに眺められるポジションに惚れて宿をとった。
私達はヴィアフェッラータの経験者ではないし、山登りの達人でもない。
でも何度か訪れるうちにすっかりドロミーティのファンになってしまった。
初めてドロミーティに誘われた時は、「えっ?山?!」とその名称も知らず、
知識もヘッタクレも無い単純な発想でちょっと毛嫌いしていた訳だけれども、
今では夏になるとドロミーティでトレッキングをしたくなる軽い ‘病’にかかってしまった。
正直余り乗り気でなかったそんな私達をファンにさせたその魅力とは?
折角のバカンスで何故わざわざ長い道のりを歩くのか?
のんびりホテルでまったりしていればいいのに?
ジャグジーとかプールに浸かって?
到着した翌日は雲一つ無い快晴!
パッソガルデーナに宿をとり、そこから見上げるチールグランデ方面へトレッキング。
そこは既に標高2200メートル、上を見上げて夫が「ほら、頂上を見てごらんよ!人が見えるぞ。」と。
今回は忘れずに持って来た望遠鏡を覗くと見える見える!
シチュエーションは逆なのに、我々の方の足がガクガクしてきそうだ。
写真を撮りながら、見事な景色を堪能しながらマイペースで登って行くので、楽しいトレッキングだ。
上から降りてくる人達と挨拶を交すのがこれまた清々しい。
結構飼い犬を連れてトレッキングする人も多い。
登山靴を履いた犬?! “長靴を履いた猫”と何だかダブってしまった。
とっても勇敢な姿にグッときた。
たまに小さい子どももいる。
「偉いなあ~!」とつい声をかけてしまう。
下りは登ってくる人に「もう少しだから、頑張って~!」と又、声をかける。
翌日はグルッポディセッラの一部を、前日の倍の6時間近く歩いた。
ゆっくりゆっくり、、、。
おかげで写真の枚数が膨大な数になった。
おやつ用にリュックにしのばせておいた桃がこれまた美味しかったなあ。
滝が力強く流れていて、その水音が涼しさを与えてくれる。
うわっ、カモシカ?!
野生のを見るなんて初めてか?
ちょっと胸がドキドキした。
山の宿に宿泊する人達はほとんど連泊するので、自然と顔見知りになる。
食後、サロンで寛ごうと二人で座っていたら、
一組のご夫婦が「ここにご一緒してもいいですか?」と尋ねてきた。
勿論、大歓迎だ。
72、3歳ぐらいかと思いきやご主人は今年85歳を迎えるとおっしゃっていた。
バリバリの現役だ!
若い!!
私達のように毎回、興味本位で宿を変えるカップルや家族もいるが、普通は常宿があって
「また、今年も戻って来たよ~。」と1週間から10日間の滞在となる。
このご夫婦はもう随分昔からの常連客で、この辺りにとても詳しい。
あのコースはいいわよ、とか、7月に来ると花がもっと綺麗だよ、とか色んなことを教えてくださる。
おまけに旅好きと来たもんでお互いの会話が弾む。
そこへまた違うファミリーも加わり、そしてホテルのオーナーも会話の中に入って来た。
これが山の宿泊のいいところだ。
アットホームなので、尚更寛げるというものだ。
2時間位はあっという間に過ぎてしまう。
夏とは言えど、夜の気温は5、6度なんていうこともあるので、
宿の中でこうしてたわいもない話をしてまったりと時間を過ごすのもいい。
おまけにありとあらゆる生きた情報が入って来るので、それをきっかけに
「じゃ、また来なきゃね。」と魔法にかけられる。
街へ出ればショッピングも出来るし、夏の夜はジャズコンサートや様々なイベントが開催される。
自生している大好きなスカビオサを見つけたり、前日歩いたコースを下界からマジマジと見上げて
「えっ?あんなところを歩いたの?」とちょっと自信を持ったり、
また山ならではこそ美味しいハーブの香りが強いパンを食べたり
「ワクワクとキラキラ」が回りに沢山転がっている。
イタリア語で”アルプスの星”と呼ばれているエーデルワイスも咲いていた。
イタリア人ファンも多い、アニメ: アルプスの少女ハイジが
ひょっこりと姿を現しそうな景色にいつまでも見とれていた。