バカンスの後、キッチン用品を扱う店を何軒か廻ってみた。
ベルギータイプはある。
でもあれと同じものが無い。
ネットで色々検索してみた。
どれくらいの厚さに仕上がるのか今ひとつわかり難くて迷ってしまう。
厚手のフライパンで蓋も同時に使いながら試してみた、どうも違う。
しっくりこない。
やっぱりあの桝目の焼き目が重要ポイントなのだ。
どうしてもノルウェーで食べたワッフルが食べたくなった。
バカンス中、ウインドーで見かけた電子式のワッフル焼き器、
「きっとどこでも手に入るだろう」と甘く考えたのが間違いだった。
イタリアにだって包装されたワッフルが売られている。
でもそれじゃだめなんだ。
初日の朝食、ワッフル焼き器を使っている宿泊客のご婦人がいらっしゃった。
私はそれをかぼちゃの種が入っているほんのり甘いパンを頬ばりながら、
暫しの間観察していた。
数秒後ピーピーと完成のお知らせのサインが鳴った。
蓋を開けたらプレートにくっついてしまって四苦八苦していた。
それを見て私は初ノルウェー版ワッフルを諦めた。。。
数日後、窓の外に目をやるとかもめが飛んでいて、テラスの白いデッキが眩しいくらい。
気持ちいい日差しの入る食堂には、あのワッフル焼き器があった!
天にも昇る気持ちだった。
“スタッフにお気軽に尋ねてください”と手書きの張り紙。
あの時のご婦人が失敗したワッフルが脳裏をよぎったので、
すぐさま宿泊客が食べ終えた食器を片付けていたスタッフの女性に声をかけた。
中々かっぷくが良く愛嬌のある笑顔、
「きっと美味しいワッフルを作ってくれるに違いない」と私は確信した。
「ほらいくわよ、見てて!」と早速スプレーをシューっとプレートの表面に噴射した。
バターの噴射式のものだ。
大きなボールにすでに用意された生地、
それをレードルですくってワッフル器へ流しこむ。
蓋を閉めて出来上がりの合図を待つ。
3分ちょっと待っただろうか。
濃い目にいれたカップチーノをスプーンでかき混ぜた時のような色をしたチーズ、
専用のカッティングナイフがあり、それをスライスしてのせるのだ。
真似してやってみたけれど、思うように薄くカット出来ない。
「もっと力入れなきゃだめよ!」と駄目押しが入り、再び試してみる。
出来たてのワッフルに薄くカットした茶色いチーズはその熱でゆっくり熔けていく。
スタッフはその上に苺のジャムをのせた。
夢にまで見たノルウェー風ワッフルの完成だ。
いつだったか、ドキュメント番組で見たベルギーのものとも又違う。
こうやって食べるスタイルは伝統的らしい。
癖になる美味しさだ。
いつかノルウェー人の友達が出来たら、是非そこの家庭の朝食にお目にかかりたいものだ。
翌朝、前日に習った事を実行に移した。
あのふくよかな女性スタッフは遠くからウインクして、私のぎこちない行動を見守ってくれた。
焦らず慌てず、チーズもジャムの基本通りにたっぷりのせて、、。
テーブルについて食べ始めると、別の宿泊客がぎこちなさそうにそのワッフル焼き器を試していた。
初めての様子だ。
何だか笑いがこみあげてきた。
お洒落なキッチン用品の店では一桁違いのゴージャスなものもあれば、
スーパーでは「ねえ、ちょっと使ってみない?」と
客にアピールするかの雰囲気で気軽に買えるものも売られていた。
言うまでも無く、あのチーズもカッターも我が家にやって来た。